古き良きアメリカの若者の日常を描く『忘れられない人』

昔よく行った大阪天満橋の映画館、近くで働いていた私は招待券をもらい一人で足しげく通ったものです。

その時ちょうど上映されていたのが『忘れられない人』1993年アメリカ製作、監督があのトニー・ビルだと知ったのは後になってからのこと、道理でどことなくノスタルジックで繊細なラブストーリーだと思いました。主演はクリスチャン・スレーター『モブスターズ』や『トゥルー・ロマンス』など少しやんちゃなイメージの強い彼でしたがこの作品では繊細で純真な青年を演じています。ちなみに私は『ヘザーズ』を見て彼が好きになりました。ヒロイン役はマリサ・トメイ、舞台では実力はと認められている彼女ですが代表作『いとこのビニー』以後この作品までに目立った出世作は見当たりません。個人的には色々な映画にちょこちょこ顔を出しているので知っていましたし、ラテン系の女優さんの中では可愛くてお気に入りでした(正確にはイタリア系アメリカだそうです)。

本編はモノクロ映像の孤児院で小さな男の子が倒れるところから始まります。シスターに抱かえられベットに寝かされると窓には雨、流れている音楽は優しくて物悲しいピアノ曲。突然場面が変わるとマリサ・トメイ演じるキャロラインがコミカルに帰宅する様子が映し出され、身支度を整え玄関を出た瞬間に恋人に振られるとなんとも急展開で話が進んでいきます。さっきの少年は何?と疑問を抱えたまま次々に登場人物が現れ、クリスチャン・スレーター演じる胡散臭い青年アダムが刺されるまでどんな展開になるのか予想もつきませんでした。その間にもコーヒーショップでのバイトやタバコの販売機、ウエディングセレモニーでカンカンをつけて走り出す車、ショッピングモールにクリスマスツリーの飾りやモミの木を売る風景とこれぞアメリカな映像が映し出され胸が躍ります。ラストに近づきアイスホッケーの試合で寡黙なはずのアダムが若者らしくシュートに雄たけびを上げ喜ぶシーン、身体が辛いはずの彼の快心の笑顔に見ているこちらは涙が流れました。

そしてエンディングは彼のいなくなった部屋で唯一の形見であるレコードを掛けるキャロライン、流れる曲は冒頭で登場した少年アダムが涙が止まる曲とシスターに渡されたピアノ曲、悲しいときにはこれを聞いてと優しいアダムの思い出に暖かい涙があふれるのでした。

こちらの曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=58Nz7y26Tfs
聞いてみてください。